SHURE E4cN レビュー

以前の日記でレビューしたKH-C701でやめときゃ良かったのだが、同じく候補に上げていた、SHURE E4cNも結局購入してしまった。以下、試聴に使用したDAPは同じくKENWOODのMedia-Keg HD30GA9(以降KEG)を使用。

【国内正規品】 SHURE E4CN-J ヘッドフォン(ブラック) SHURE E4cN
http://www.shurestore.com/earphones/eseries_e4c.html

SHUREに関してはオールドファン、アナログファンの方であればイヤフォン以外でご存じかもしれない。元々アナログカートリッジや、マイクで有名なメーカだ。そのSHUREが出しているコンシュマ、DAP向けのイヤフォンがEシリーズである。

SURE E Series

ラインナップとしては、E2cからE5cまで価格帯が非常に幅広いが、私が購入したのはE4cNと呼ばれるE4cの黒色バージョン。結構大きく見えるがハウジング自体は、国産のカナル型イヤフォンと比べても非常にコンパクトである。

  • 装着感

E4cも海外メーカの他のカナルタイプイヤフォンと同様に、いろいろなタイプのイヤチップが添付されている。シリコンゴムの色違い、サイズ違いで6ペア、ER系と同様なトリプルフランジ、更には黄色の小さめのスポンジフォームまでついてくるのだ。これはやはりカナル型の使用感や音質の評価が、いかに耳道にフィットするかで変ってしまうため、いろいろと試して欲しいという配慮なのだと思われる。この点は非常に良心的だ。
E4c Accessories
イヤチップで一番気軽に使えるのはデフォルトで装着されている、グレーのシリコンゴムのチップである。私は最初、これに慣れていなかったせいか、上手く耳道の奥までは挿入できなかったのでKENWOOD KH-C701に添付されていたオレンジスポンジ(偶然にもステムの径が合い、装着できた)使っていたのだが、それはE4cNの正しい装着方法を知らないせいだった。このイヤフォン、ステム(ドライバから音を耳道に導くダクト部分)の取りつけに角度が付いており、一般的な耳道のカーブに合わせるようになっている。一般の人の耳道は上側と後側にカーブしていくため、ステムの角度を合わせるによう装着すると最初にあった一般的なE4cの写真とは上下が逆、ケーブルが上にきて耳にかける向きが正常なようで、私もその状態で装着することで、ようやく耳道の奥にしっかりと装着することができた。今では慣れてしまったので、30秒以内で装着できるが、慣れるまでは中々苦労するだろう。始めは自分の耳道の想像しながら、ゆっくりと下から上へ装着すると上手く装着できるだろう。

  • 遮音と音漏れ

このイヤフォンも前にレビューしたKH-C701(ER6i)等と同様に、遮音性能は非常に高い分類に入り、音漏れも非常に少ない。ただし、音漏れはER系とは違い、皆無では無いようだ。この部分は後述するが、特徴的な音質に反映されているのかもしれない。それにしても、海外製のカナル型イヤフォンは、スタジオ、PA育ちの製品が多いのが理由なのか、遮音と音漏れに対する意識が国産のとは全然違う。ラグジュアリーな用途が考慮されている、国産品とは一線を画している感がある。

このイヤフォンもKH-C701と同様、ゴム製のチップと比べるとスポンジの方が格段に遮音、音漏れとも効果が高い。といっても標準のイヤチップを使用しても、国産のカナル型とは違い、通常の音量で充分に音楽を楽しめて、音漏れは全く気にしなくても大丈夫であるため、電車等での利用に向いている。

あと、E4cのケーブルはC701に比べるとかなりごつく太い、固めのタイプなのでタッチノイズ(※)は大きめである。これは装着の時に、ケーブルを耳の後ろに回すことで、気持ち少し気にならなくなりますが、できればもう少し細く、柔らかなケーブルにして欲しかった。この辺はデリカシーの無さ、というか、国産に劣る感じがする唯一の部分だ。

(※)ケーブルのタッチノイズとは、ケーブルを触ったり、他の物にケーブルがぶつかる事により拾ってしまう雑音の事である。カナル型イヤフォンは耳道に繋がるハウジングからケーブルが延びているため、ケーブルが拾った雑音はマイクロフォニック現象(聴診器を思い出して欲しい)により雑音が増強されて、耳道に伝わる。タッチノイズは、ケーブルの材質や太さに左右されることが多いが、装着方法によりミュートすることで軽減することはできる。

  • 音質 (KH-C701の時と同様に、評価前のエージングは約30時間程、普段聞いている楽曲で行なっている)

KH-C701に比べて、エージングの効果が大きいのが最初の印象だ。というのも鳴らしたては全体的にがさがさして、低音も全然出ない。がしかし、30時間程適当に鳴らして毎日聴いていると見違えるようになった。当然だが、評価は良くなった状態のものだ。

音質に関しては、人はその機器の最初の見た目で判断する傾向にあるが、私もこのイヤフォンを最初に見た時は低音がボンボン出るのだろうと思ったいたのだが、その印象は全く以って覆された。というのも、KH-C701に比べると高音の方が目立って聞こえるのだ。解像度はER系程に分析的ではないが、それでも非常に綺麗な高域であり、ボーカルファン、弦楽器ファンは一聴の価値があると思う。KH-C701との大きな違いはずばり音場感。KH-C701はER系同様に、耳の間だけに音場が形成される。従って、聴いていて楽しくないソースもあるのだが、これはER系ではなく、遮音が高く音漏れが低いカナル全体の特徴だと思っていたのである。しかし、E4cは同様のカナル型のイヤフォンなのに、オープン系のように音場が外に広がるのである。音場の再生が得意なのは他のジャンルでも解る。KH-C701を含めてER系は、2本のマイクだけを間隔を離して録音したジャズ等を聴くと、音場の真中が抜けて聞こえることがままあるのだが、E4cはそれが無いのである。同様の理由で余韻や残響の再生も得意だ。従って、小編成のクラシック系の再生にも向くだろう。

問題は思ったりよりも少ない低音の量感と、合わせて中、高域にちょっと雑に感じる音域がある所だ。従って、管楽器の合奏、例えるならば、レスピーギ/ローマの松のクライマックスのような部分が、多少平たんに聞こえる事があることだろうか。その他に関しては特に大きい欠点は見当たらない。特にに高音の艶やかさに関しては、KH-C701を上まわるものがあり、再生帯域も広い。低音が足りなく感じるのも、私の耳が未だに"ドンシャリ好き"なだけであり、ジャンルや聴く人によっては低音不足は問題にならないとも思う。ちょっと贅沢してDAPでも良い音で音楽聞きたいなと思う人全てに薦められると思うが、KH-C701と比べて一万円以上の差がある音か?と聞かれたら、答えに困るだろうとは思う。

ジャンル別に評価すると

クラシック:○
ジャズ/フュージョン:◎
ポップス/JPop:◎
ロック/ハードロック:○
テクノ/エレクトロ:○

こんな感じだろうか。

  • 総論

低音の量感を補えるだろうと購入したE4cだが、正直期待は裏切られた。がしかし、KH-C701よりもジャンルを選ばず装着も手軽なため、現在は私の通勤のお供になっている。

これで私のカナルイヤフォン歴も6機目になるが、何度も書いている通りカナル型は上手く耳道に密着させてスイートスポットに装着できるかどうかが、全てだと思う。中にはそれができない人もいて、そういう人は残念だがカナル型を諦めなくてはならないだろう。

耳あかの型は1塩基が決定 乾燥タイプは“突然変異”

今日のニュースで出ていたが、通称「ネコ耳」等と呼ばれる、耳道(耳垢)が湿っている人がいると思うが、このタイプは日本人では少ないらしく、他の国、欧米やアフリカにいくに従い、割合が高くなってくるのだそうな。むしろ、日本人の8割にあたる、という乾いた耳道の人は世界的に見ると異端で、遺伝子的には突然変異らしい。
カナル型イヤフォンは、その構造上、チップの衛生には気を使う人が多いことだろう。 海外のメーカによるカナル型イヤフォンに、イヤチップを交換品として提供するメーカが多いのは、欧米では湿った耳道の人も多い、という理由からなのだろうか。


さて、カナルでは足りないのが一般的な低音の量感だが、どうしてもこれが欲しくなった私は、懲りずに次回はこいつを使ってみる予定。
Ultimate Ears Super.fi 5 Pro