KENWOOD KH-C701

標題のカナル型イヤーフォンKH-C701(以降C701)を購入。非常に調子が良いので日記でも書いておこう。試聴に使用したDAPは同じくKENWOODのMedia-Keg HD30GA9(以降KEG)を使用。

C701はカナル型のイヤフォンが好きな人であればその見た目で解る通り、かのEtymotic社のER6/ER6iのOEMと思われるモデルだが、ハウジングやノズルの形状を見ると、ER6ともER6iとも違う。また、インピダンスが32ΩとER6iに比べると高く、ER6に比べると低くなっており、音質もKENWOODが自社のDAPに合わせてチューニングしているとの歌い文句だ。
KENWOOD KH-C701

オーディオ機器の機械部品/電子部品部分の馴染みを良くする「エージング」という行為自体は、その真偽に諸説があり、私自身も全面的には、いささか信用できないと思っているのだが、特定の音域の音が出やすくなる、購入した当時の埃っぽい音が無くなり艶やかに鳴る、という効果は認めざるを得ないため、丸一日程、いつも聴いている音楽を少し大きめな音で流しっぱなしにして放置してみた。

  • 装着感

以前の日記で、私はEtymotic社のER-4Sに関しては合わなそうだ、ということで購入を一度見送った経緯を書いたが、その実は同製品を購入していた。しかし、その時はiPod Shuffleを使用していたこと、そしてこのイヤーフォンのトリブルフランジのイヤーチップが、やはり生理的に合わなかったこともあり、殆ど使わないまま、最近、友人に譲った経緯がある。C701は同じEtymotic社のER-4SのDAP用である、ER6/ER6i直系ということで、その点心配したのだが、こちらは大丈夫だった。というのも、C701はデフォルトでは写真のように、ダブルフランジのイヤーチップが付いている。このダブルフランジはER-4Sのフランジタイプ同様、私には調子が悪く、しっかりした低音を出そうとベストポイントを探そうとグリグリと、容赦なく耳に押し込んでいくと、耳道が痛くなり、更に我慢していると気分が悪くなるのだ。しかし、もう一つ添付されている、オレンジ色のスポンジ素材のイヤーチップを試してみた所非常にマッチしたのである。
KH-C701 オレンジスポンジ
恐らくはイヤーウィスパー等と同様の素材だと思われるこのスポンジだが、指で丸めて細くした状態で素早く耳道に入れて、数秒待つと形状が復活して耳道にぴったりと密着するようになる。 この状態になったらしめたものであり、一般的なシリコンゴムで出来たカナルチップとは次元の違う装着感を得ることができるだろう。

  • 遮音と音漏れ

以前も書いたが、現在、私がDAP用のイヤフォンに最も求めるのは、遮音の高さと音漏れの無さである。遮音性能が高ければ外部の雑音をカットできるので、音量を上げずに音楽を楽しむことができる。また、人がたくさん乗車している電車の中での音漏れだけは絶対に避けたい。 最近はカナル型はすっかり人気の分野のようで、国産のメーカも多数の商品を出している。しかし国産のカナル型イヤフォンの殆どは、安全性のためか、耳道への密着度もあまり高くなく、密閉式とあっても、大抵はエア貫きの為の穴が開けてあるので音漏れが必ずあるのだが、C701はそんなことはなく遮音と音漏れは一級である。特に前述したオレンジスポンジタイプのチップで完全に装着すると、これはまさにカナル(耳栓)であり、例えばキーボードを叩く音は音楽を鳴らさなくとも全く聞こえなくなる程の遮音の高さである。地下鉄の騒音も特定の周波数の音以外は、8割方カットされてしまうようで、音楽を楽しむための音量を上げなくても良いため、音漏れも皆無である。万歳。

  • 音質

ER6/6iのOEMから良い意味で変っていることを期待していたのだが、音質自体は、やはりER系の音だった。高域が素晴らしく滑らかでありこの点は最高だろう。私はいろいろな音楽を聞くが、このイヤフォンは特にクラシック専門で聞く方には御薦めだと思う。(Etymotic社の製品も同様)。とにかく高音のきめ細やかさ、あと、後述するが高音〜中音が膨らんだ低音でマスキングされない為に、細かい音まで非常に分析的に聞こるのだ。特に弦/管楽器ファンに関しては圧倒的に御薦め。 バイオリン、ビオラ等やオーボエ、等は鳥肌でまくりだし、アルトサックスの音色やフュージョンのギターも最高だ。
意外だったのは低音はEtymotic社の製品をベースにしているにも関らず、結構出てる、ということ。Etymotic社製品の低音は非常にタイトでフラットであるため、大抵のユーザは普通のイヤーフォンの低音を想像すると低音が出ていないように誤解が生じるのだが、高い密着度を前提としたEtymotic社等のカナル型は耳道に対する、スイートスポットにセットできるかどうかで低音の押しだし感は天と地の差があるので注意が必要である。ベストポジションで装着したC701は低音の量感もあり、尚且つ高域の滑らかさを邪魔しない。ただし、これは前述したオレンジスポンジを使った場合であり、ダブルフランジの場合は低音がかなり不足する。具体的には80hz〜180hz辺りが足りなく感じるのか、スタジオ録音されたミュートの効いたバスドラムの音は、ペダルで踏んだ時のアタック音しか、聞こえない位である。ゆめゆめ装着の仕方が命のようで、きちんと装着出来るか否かで、音質の評価はがらっと変わるだろう。

最後に私が聴いた状態でそれぞれのジャンルの適合を評価すると

クラシック:◎
ジャズ/フュージョン:◎
ポップス/JPop:○
ロック/ハードロック:△
テクノ/エレクトロ:△

こんな感じだが、まあ、簡単に言えばアコースティック系に方に御薦め、ということになるのだろう。といっても他のジャンルでも「ズンズン」「ドコドコ」という100〜200hzの膨らみは有害不要、国産のイヤーフォンはオートラウドネス仕様だ、と思っている方にはどんなジャンルでもオールマィティに良いイヤーフォンであると思う。また、ドライバ部が非常にコンパクトでケーブルも細いため、装着しても軽く、目立たないのも良い点だ。私も通勤に常用している。

※このような遮音性が高いイヤフォンが快適だからと言って、自動車が走っている所での徒歩、自転車やバイクの運転等では絶対に使用しないで欲しい。普通の人間が危険を察知するのに、どれだけ聴覚に頼っているのかを理解すべきだ。