力などいらぬ

【インタビュー】“四代目耳型職人”設計!ソニー渾身のインナーイヤーヘッドホン「MDR-EX90SL」

カナル型イヤフォンの愛好家として何度もここで書いているが、ポータブル目的で使うことを前提にしているのであれば(カナル型なのでむろんそうだと思うが)、外部からの遮音性を高く、外部への音漏れを無くしてほしい。記事中のインタビューで意外だったのは、過去のEXシリーズは元々フラットな特性を作っていなかった、ということ。国産メーカがドンシャリを公言しているわけで、珍しいと思う。

耳栓タイプの密閉型にするために小型化したのですが、パワーが足りないために高域と低域を上げて音質を調整していました。アウトドアで使う場合、特に電車の中では最適な音響がえられますが、フラットな特性とは言えません。
[ソニー渾身のインナーイヤーヘッドホン「MDR-EX90SL」/他のEXシリーズとの違いはありますか? ]

海外製のポータブルオーディオ向けのカナル型イヤフォンは、殆どのメーカがドライバにBA(バランスドアマチュア)方式を使用しているが、この方式は元々は補聴器や携帯機器で使用するのが目的だったトランスデューサであり、一般的なダイナミック型に比較すると非力なものだが、等に既に書いたとおり、遮音性を高く、外部への音漏れを無くす、二基のドライバを使用する、などの工夫により、十分にパワフルに鳴るのを実感している。そう、イヤフォンのドライバにパワー等いらぬのである。まあ、この二つの性能を海外製品並みに良くすると、イヤフォンを装着したままで道路の脇を歩いたり、自転車に乗っていると外部環境音(自動車の警笛や、周りの人間の声、など)が全く聞えなくなるために危険だ、という判断があるのだろう。(ならば、そのようなケースではイヤフォンを外せ、と歌うべきだがそんな文句みたこともないしな)
オープンな(遮音性の低い、音漏れしまくり)イヤフォンのほうが開放されている分、カナル型に比べて耳に優しい、難聴になり難いと誤解している人がいるが、本当は逆である。実際に騒音の多い、電車の中のような状態で音楽を聴けば判るのだが、遮音性が低く音漏れがある状態では、細かい音を聞き取ろうとして人間は必要以上に音量を上げるからである。結果として短時間の曝露でも危険なdb(デシベル)で音楽を聴いてしまうわけである。(電車でシャカシャカいわしてるのは大抵こういう理由である)
最近のニュースで、「iPodは難聴を助長する」、と米国で問題になったためにiPodの更新で最大音量のリミッタ機能が追加されたのは記憶に新しいが、この辺の事情を知っている人であれば、まずはあの「シャカシャカいわす」付属のイヤフォンをなんとかすべき、と言うことだろう。