Not Now but Good - Not NowレーベルのJazzを聴き比べてみる

先日購入したNot NowレーベルのBill Evans RiverSide 5枚組に気をよくして、同じシリーズの他のアーティストも購入してみた。

Train's Comin'

Train's Comin'


Atlantic Years

Atlantic Years


前者は、Black Pearls、Dakar等、自分が聴いたことが無い盤が入ってるので、後者は殆ど持っているアルバムばかりなのだが、このレーベルに対してちょっと試したいことがあったので、敢えて購入してみた。(安いしね)

というのもAmazonのレビューやネットではこのNot Nowレーベルから出ている一連の廉価なセットに対して「音が悪い」とか「安かろう悪かろう」という評判が挙がっているのだが、そもそも著作権保護対象から外れた楽曲を廉価に提供するのがNot Nowの戦略な訳で、わざわざ音の悪いマスターをそのために作るのだろうか? という疑問である。今ある物をそのまま出すのが一番コストが掛からないはずだ。

物の価値を購入した時の価格で決める人は多い。自分が過去に定価で購入した商品が廉価が出ているのは気分が悪い人もいるだろう。しかし物の価格は変わっても良い物の価値は何年経っても変わらないはずだ。

ここでは純粋にNot NowレーベルのCDと私が元々所持しているオリジナル?のCDとで聴き比べを行ってみた。

聴き比べを行ったCD

アルバムタイトル アーティスト レーベル
Coltrane Jazz John Coltrane Atlantic
Giant Steps John Coltrane Atlantic
My Favorite Things John Coltrane Atlantic
Blue Train John Coltrane Blue Note
Explorations Bill Evans Reverside
Portrait in Jazz Bill Evans Reverside

使用した機器とソフトウェア

種類 名称
ヘッドフォン UltimateEars TripleFi 10, ULTRAZONE HFI-650
ヘッドフォンアンプ, DAC SONY PHA-1
コンピュータ, OS MacBookPro Retina 15inch (Mac OS X 10.8.2), Corei7-975 Extreme Edition 使用自作PC(Windows 7 Ultimate)
プレイヤーアプリケーション Audirvana Plus (PHA-1との接続はdirect/integer mode、oversamplingはmax)、foobar2000 (WASAPI、Resamplerプラグイン使用)

聴き比べの結果

Coltrane Jazz|John Coltrane|Atlantic|
Giant Steps|John Coltrane|Atlantic|
My Favorite Things|John Coltrane|Atlantic|

3枚とも上記"the atlantic years"に収められているアトランティックのアルバム。アトランティックの録音は典型的な当時の左右のチャンネルが明確に分離された録音だが、とても音が良く、私の持っているオリジナルに比べるとよりクリアでベースやドラムスが鮮明になっている。 My Favorite Thingsのマッコイタイナーのピアノも明るく聴こえる。Not Nowのを残すことにした。※1 ただし、Giant Stepsに収録されている同曲やNaima等の別テイクが削られている。

Blue Train|John Coltrane|Blue Note|

Im Old Fansionedのロングトーンが私が元々もっている盤に比べると若干埃っぽい感じがする。但しBlue Noteはマスタによってかなりエコーを付加するが(私はこれが大嫌い)それが少ないので埃っぽい感じがするのかもしれない。 元盤を残すことにする。

Explorations|Bill Evans|Reverside|

Israelのブラシやシンバルの切れ、エヴァンスのピアノの残響。何度聴き比べてもNot Nowと元盤の違いが私には判らない。

Portrait in Jazz|Bill Evans|Reverside|

これがちょっとおかしかった。Not NowのはGiantSteps同様にAutumn LeaveとBlue in Greeのテイク違いが削られている。残されているテイクはマイナーな方であり、録音レベルが低く聴こえる。まるで他のマスターから持ってきてここに入れたみたいだ。

結論

Not NowレーベルのJazz、少なくともコルトレーンエヴァンスに関して注意はあるものの、肝心の音質はオリジナルに比べて劣るものではない。という結論に達した。(機器による測定などは行っておらず、あくまで個人の感想だが)

逆にオリジナルと違う、注意すべきは以下の点だ

    • 同じ曲の別テイクは無作為に削られている可能性が高い (自分のお気に入りが残っているとは限らない)
    • 盤によって(全てではない)リマスターされており、よりクリアになっている傾向だが、それが必ずしも良いとは限らない
    • 権利の問題か、ジャケット写真がオリジナルと違う(コルトレーン/アトランティックだけはオリジナルが使われている)

特に3つ目はiTunesでアートワークを取得しても、ちゃんとNot Nowで用意されたものが出てくる。(まあ、マニュアルで原盤のアートワークに入れ替えれば良いだけだが)※2

ということで、これらセットに興味がある方は上記の注意点を気にしなければお勧めだ。

そもそも本レーベルの最大の魅力は往年の名盤、それもアーティストを代表する大名盤を5枚まとめてたったの\1,200で愉しめるということであり、それはJazzに興味がある人の敷居を下げてくれるはずだ。

※1: オリジナルといっても当時輸入盤や日本国内盤として購入したものであり、出自やマスタリング等は一切解らない。 Jazz総じて再発された盤のほうが音質が良い(例外もある)
※2: 私もそうしている